こんにちは。上原です。
今日は、リウマチの「治療目標」について今一度考えてみたいと思います。
まずは、以前当院で患者さんにご協力頂いたアンケート結果をご覧ください。


上のグラフは、選択肢の中からいくつでも選んでもらう形で実施、下は選んだ項目の中から一位を選んでもらった結果です。
この結果を見ると、「関節の痛みがなくなる」「関節破壊の進行が止まる」といった「寛解」を目標とする回答が多い一方、本心では治癒を目指したいという患者さんの切実な希望が浮かび上がります。
治癒とは、病気が完全に治ること。リウマチに当てはめると薬を使わなくても症状がなく再燃しない状態が一生続くことだと考えます。リウマチの治療薬は著しい進歩を続けており、以前のようにリウマチ=関節破壊という時代ではなくなりました。それは本当に素晴らしいことで、薬の開発に尽力した多くの先生方の情熱の賜物だと思います。ただ、現在のリウマチの治療薬は免疫異常を是正し炎症を抑えるものです。薬を使えば炎症を抑えることができますが、多くは薬をやめるとまた炎症が起こってきます。
ゆえに、現在のリウマチ治療でまず目指すところは「寛解」です。寛解とは、薬を続けていればほとんど症状なく進行もせず生活できる状態のことを言います。リウマチは波のある病気なので、一生の中でも調子が良い時期もあれば悪い時期もあります。季節や体調、精神状態にも左右される病気です。その時々の状態に合わせて、薬を調節しながら症状をコントロールしていきます。
そして寛解はゴールではなく、更なる治療目標への第一歩です。治療目標は冒頭のアンケートを見てもわかるように本当に人それぞれです。パソコン作業が無理なくできることを目標にする人もいれば、バレーボールが思いっきりできることを目標にする人もいます。目指すところが違えば治療のアプローチも異なります。もちろん寛解を達成した上での治療目標ですので、まずは寛解を目指すのは疑いようもありません。しかし寛解の先の治療目標が持てる時代になってきたというのは事実です。
リウマチを発症すると大変な病気になってしまったと感じる人もいるかもしれません。しかし、糖尿病も脂質異常症も、基本的には薬を続けなければ数値が悪化し臓器への影響が進行していきます。なるべく進行していかないように薬を使用するわけです。そして薬をやめると数値が悪化することも多いです。もちろん食事を気をつけたり運動することはとても大事ですし、それによって数値が改善することもありますが、糖尿病になりやすい体質は持ち続けているわけなので、油断すると元に戻ってしまいます。そういう意味ではリウマチも同様です。リウマチも体質のようなものです。一時期炎症が治まって薬をやめられることもあるかもしれません。しかし体質は持ち続けているのでいずれ再燃する可能性があり注意深く観察する必要があります。リウマチは糖尿病や脂質異常症と同じように慢性疾患であり、基本的には適切な薬物治療を続けていくことが重要なのです。
患者さんにはリウマチという病気に囚われることなく、うまく付き合って人生を前向きに生きてもらいたいと常々思っています。
力になれれば幸いです。